カリスマの終焉

世界に類を見ない、日本のコンビ二エンスストアという店舗は、今や全国に55,000店舗以上もあります。1974年にセブンイレブン1号店が開業して、40年あまりで、日本の流通マーケットの主役となったのです。

 

そのセブンイレブンをここまでにした男が、先日退任を表明した、鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングスCEO(最高経営責任者)です。

 

民間企業に勤務していた時に、セブン&アイの本部担当をしていた私は、麹町の本社を何度も訪れました。ここには、VIP専用のエレベーターがあります。このエレベーターには、鈴木CEOが乗ります。また、彼のランチは、セブンイレブンの新作候補の弁当です。彼が「イエス」と言えば、全国の店舗に並ぶことになり、「ノー」と言えば、ボツです。

 

セブン&アイの社員にとっても、私たち得意先の担当にとっても、彼は雲の上の存在でした。年に一度あるセブン&アイの総会に何度か出席しましたが、彼の挨拶が始まると、新高輪プリンスホテルの大ホールが、シーンと静まり返ります。

 

百貨店のミレニアムグループ(西武・そごう)を傘下にしたときは、そごう西武本部を担当していたので、「百貨店がついにチェーンストアに呑み込まれる時代か・・・」という

バイヤーの嘆きも聞きました。

 

セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートが、コンビニ業界のトップ3ですが、1店舗あたりの売上は、セブンが66万円で、2位のローソンは53万円です。平均売上で、13万円もの差があるということは、ブランド力、商品力、サービスすべてにおいて、セブンの支持が高いことを示します。

 

セブン&アイホールディングスとの取引は、得意先にとっては、かなり厳しい要求がなされます。私も何度、辛酸を舐めたことか。「出来ないなら他のメーカーにするから・・・」という強気のバイヤーとの戦いがありました。

 

今、大河ドラマ「真田丸」で熱い、長野県上田にある上田東高校は、鈴木氏の母校です。そこには「変化対応」と彫られた碑が立っているそうです。「変化はチャンスだ」を繰り返し言ってきた鈴木氏が、周囲の変化を見誤り、引退に追い込まれました。単純に「裸の王様」と表現はできませんが、一人のカリスマの終焉となったのです。

 

彼の作ったコンビニエンスストアは、私たちのライフスタイルを変えてしまいました。単純に凄いことです。83歳という高齢にもかかわらずここまで邁進してこれたのは、自分の仕事への誇りだったのでしょう。

 

カリスマの終焉・・・引き際の美学・・・保育園の子どもたちに教えるには、難しい内容ですが、今日も「子どもたちが大人になった時の姿・・・」を考えるおやじ園長であり、保育園ホワイトきゃんばすであります。