原発いじめ

2011年東日本大震災の影響は、悲しいかな、「いじめ」という形でも、今につながっています。東京電力福島原発事故の発生後、福島県から避難した中学1年生の男子生徒が、転校先の横浜の小学校でいじめを受けた問題は、マスコミでも大きく報道されました。

 

また、新潟でも、福島県から避難した小学校4年生の男子児童が、担任教諭から「菌」をつけて呼ばれ、学校を休んでいることが明らかになりました。避難者へのいじめは、横浜市以外でも相次いで発覚しています。

 

横浜市へ避難した家族は、原発事故から2日後の3月14日に自主避難を決めたそうです。父親は勤めていた会社を退職し、一家は、避難者を受け入れていた東京都内の公共施設などを転々とした後、「求人も多く、身寄りがなくても生活が再建できると思った」と、横浜への移住を決めました。

 

移住後、1年足らずで、一家は悪意のある視線を感じるようになりました。自宅ポストに「放射能をまき散らすな」という紙片があったり、福島ナンバーの乗用車の前には、ゴミが何度も置かれていたそうです。

 

母親は、周囲に気を使い、なるべくことを小さく収めようと、一連の出来事をオープンにしなかったようです。この行動が、結果としては裏目となるのですが、母親の行動を誰も責めることはできません。

 

そして、いじめを受けた男の子の手記に私たちは心を打たれます。

 

「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだから、つらいけどぼくはいきるときめた」。

 

今、彼は中学1年生となり、フリースクールに通っているそうです。「今の学校は楽しい」と強く生きています。家族も「温かい励ましのおかげで、私たちも前に進めそうです」と、今を生きています。

 

現在も、なお、被災地からの避難者が、全く縁のない新しい土地で生活をしています。好奇の目で見られないよう、避難者であることを隠して暮らす人も多いと言われています。

 

子どものいじめの問題は、根が深く、解決が難しいことが多いのですが、今回は、「福島県からの避難ということだけで、いわれのない中傷を受ける」という、原因がわかっていることです。おのずと、その対応は、学校や周りの大人たちで守ることができる内容です。

 

この事件を私たち大人は、子どもたちにどう伝えるか・・・考えていきましょう。