ピカソに見るアート思考

保育園の子どもたちは、固定概念や先入観がほとんどないので、私たち大人が絵画などの芸術作品に対してとは一味違う感想をもちます。

 

あの20世紀最大の芸術家と言われた「ピカソ」の有名な作品「アビニョンの娘たち」をご存知ですか。5人の女性を描いた作品です。私たち大人は、「さすがピカソ!」と称賛するでしょうが、子どもたちには、「下手だなぁ~」「線がカクカクしている」「顔がゆがんでいる」など、酷評されます。誰一人「上手だなぁ~」と感じる子はいないでしょう。実は、1907年にこの絵が発表された時も、「これはひどい」と非難されたのです。

 

ピカソは、その時代によって作風が変わるのですが、彼がまだ15歳の時に描いた絵「科学と慈愛」は、死期を前にベッドに横たわる人物を囲む神父や子どもを実に丁寧に描いています。子どもから見れば「とても上手な絵」です。

 

では、26歳になったピカソは「アビニョンの娘たち」という「上手に見えない」作品を描いたのでしょうか。そこには、ピカソなりの見方があったのです。

 

ピカソはあるものを一つの方向から見た世界ではなく、普通なら見えない、反対の方向から見えた世界も一つの画面に一緒に描こうとしたのです。つまり、見る角度によって見えるものは違っていて、それを一つの画面に再構築して表すことこそ、本物の世界を描くことになると考えたのです。

 

私たち凡人には、とても理解できないことですが、長い間ピカソが本物の世界を考えてきて、たどり着いた世界なのです。

 

今、私たちは、盛んに多様性を認めようとしています。子どもたちには、これが正解という固まった考えではなく、自分のモノの見方で、自分なりの答えを生み出していってほしいですね。

 

一度、ピカソの「アビニョンの娘たち」を検索して見てください。