匂いの秘密

食欲の秋の季節です。栗の焦げる匂いや、サンマの焼ける匂い・・・もうたまらないですね。先日、保育園の先生がサンマの骨がのどに詰まってしまい、内視鏡で除去という大事件がありましたが、秋は、おいしい食べ物の香りで食欲が増してきますね。

 

しかし、私たち人間は、紙にせよスマホなどの電子情報にせよ、視覚情報優位の社会で暮らしています。鬼滅の刃の炭治郎のように「この人の匂いからは、強い憎しみが感じられる」と言えるような人は、現実的にはそうはいませんね。

 

しかし、生物界全体を見渡すと、視覚情報よりも嗅覚情報が優位の世界が広がっています。「ファーブル昆虫記」の中の有名なエピソードに、蛾のフェロモンの話があります。オスの蛾はメスの蛾の発するフェロモンをずっと離れた場所からでも察知することができます。メスの蛾を虫かごに入れておくと、次の日、たくさんのオスが虫かごの周りに群がるそうです。

 

嗅覚の仕組みは、近年の分子生物学の研究によって急速に解明されています。匂いは鼻から吸い込まれると、穴の奧の天井部分にある「嗅覚上皮細胞」という場所にたどり着きます。細胞表面には「匂いレセプター」というミクロなアンテナが多数立ち並んでいて、匂い信号が神経を伝わって脳に達し、匂いが感知されます。この「匂いレセプター」が400種近くも用意されています。

 

人間は、こんな感じですが、鼻がきく動物の代表であるイヌはヒトの2倍、ネズミは3倍のレセプターが存在しているのが分かったそうです。

 

でも、もっと驚く嗅覚の持つ動物がいます。それは「ゾウ」で、ヒトの5倍、2000種類のレセプターを持っているのだそうです。あの長い鼻で、広い草原で仲間を識別し、敵に注意を払い、食べ物のありかを探るために嗅覚が特に進化したと考えられています。

 

食欲の秋・・・人間である私たちも、嗅覚を大事にしたいですね。