ダーウィン事変

今日は、朝から感動の光景を子どもたちと保護者と共有します。ヒビが入り、今にでも生まれそうなクサガメの卵5つを飼育ケースに入れて、登園する園児と保護者と一緒に観察します。すると、卵から手が出て顔が出て、クサガメベビー誕生の瞬間を見ることができたのです。

 

「感動です!写真撮らせてください」「あらゆる生き物で、卵から子どもが生まれるのは初めて見ました」「このままずっと見ていたいけど、会社に行かなきゃ」と、保護者も感動を隠し切れません。今日は、3匹のあたらな命が生まれました。

 

さて、保育園では、カメの誕生ラッシュですが、今日は、動物の権利や正義の範囲を考える「ダーウィン事変」という作品を紹介します。書店員らが、今、最も人に薦めたいマンガを選ぶ「マンガ大賞2022」で大賞を受賞した作品です。

 

舞台はアメリカ。テロ組織「動物開放同盟」は、生物化学研究所を襲撃した際に、メスのチンパンジーを保護します。そのチンパンジーは妊娠しており、宿っていたのは、ヒトとの間に生まれた「ヒューマンジー」の主人公チャーリーです。

 

チャーリーは、人間の里親の下で15年育てられ、高校に通うことになります。そこで、様々なヒトとの関わりが生まれます。チャーリーは人間以上の知能、チンパンジー以上の腕力を兼ね備え、危害を加える者には容赦なく立ち向かいます。本作では、チャーリーとその家族が、完全菜食主義者として扱われますが、菜食主義に関する考え方の違いから生まれる生徒同士の対立が描かれます。

 

「正しさ」を主張し合う学友たちに、チャーリーは「なんで、人間だけは殺して食べちゃダメなの?」と素朴に問いかけます。「結局よく分からないな ボクの何が特別なのか・・・君もボクもすべての動物はただのONEだよ」と疑問を投げかけます。

 

私たちは、一人一人違うということを受け止めるようになってきましたが、この作品では、自分と他人の間のどこに線を引くかという考え方の違いによって、それぞれの立場の対立が強調されていくことが示唆されています。

 

「正義」にこだわって視野が狭くなっている私たちに、種を超えたチャーリーの存在は根本的な「問い」を投げかけます。「正義」とは誰にとっての正義なのか?と。