人材を育てられない

昨日から、保護者との個人面談が始まりました。子どものことや保育園活動に関する話をするのが目的ですが、民間企業で働いていた園長は、保護者の仕事の話もよくします。その理由は、仕事を頑張って、楽しく取り組んでもらいたいことと、我が子に親の仕事のことをたくさん話してもらいたいからです。

 

私は、食品・流通・小売サービス業・教育につては強いですが、私の知らない業界の話になると、勉強になることが多く、興味の幅が広がります。

 

さて、今日は、そんな企業の「人材が育てられない」という話です。

 

昭和にタイムスリップします。はい、私が社会人になったばかりの話です。新人は、定時よりも30分早く出社して、上司や先輩たちの机を拭くのが当たり前でした。毎日のように、職場では怒鳴られましたね。しかし、仕事終わりに一杯やりながら上司や先輩と腹を割って話せば、リセットとなり、すべて水に流す文化がありました。

 

ところが、新入社員の意識は劇的に変わり、今までの日本企業流の育て方が通じなくなってきたのです。

 

現在、日本全国多くの小学校では、先生は児童のことを男女問わず「○○さん」と呼びます。くん・ちゃんなど性別につながる呼び方は、ジェンダー平等の観点からまずいというわけです。

 

今では、学校だけでなく会社でも、上司・先輩からの呼称は、「さん」付けが、77.4%だそうです。私の時代は、ほぼ呼び捨てでしたが、今は、呼び捨ては15.1%しかないそうです。

 

2016年卒あたりから、新入社員を取り巻く環境が大きく変わったといわれています。職場の「○○ハラスメント」に対する感覚が鋭くなったので、コミュニケーションの入り口ともいえる「呼び名」の段階で、ハラスメントの芽を摘み取っておきたいと考える人が増え、「さん」付けにしておけば問題なかろう・・・ということです。

 

そして、コロナ禍でのテレワークが増えたのが決定的です。職場で顔を合わせる機会が極端に減ったので、管理職は、社員一人一人の能力と、それぞれが抱える問題などを把握できなくなっているのです。そうなれば、適正な業務指示も人事異動もできなくなるのです。

 

この、新入社員、若手社員に気をつかう風潮は、「ゆるい職場」と呼ばれます。一見、「ゆるい職場」は、若手にとって良いこと尽くしのように感じますが、若い世代は、働くうえで「ありのままでありたい」「何者かになりたい」という2つの動機を持つといいます。前者は、好きな場所や好きな時間で働きたい欲求で、これは満たされますが、「何者かになりたい」というのは、周りから認められたいという願望です。これが、満たされずに、転職を繰り返すといいます。

 

昭和の時代の悪しき習慣が、時代とともに改善されてきたものの、令和の時代も難しいですね。若者は、「ゆるく」なる職場で、より厳しくなる社会を生き抜くスキルを磨かなければならないのですから。