新規就農は「稼ぐ」より「豊かな暮らし」

屋上にある「ホワイトきゃんばすファーム」は、これから収穫する「ジャガイモ」に「大根」「小松菜」「カブ」「長ネギ」。そして夏野菜のピーマンがまだ収穫できます。来春に収穫するえんどう豆の種まきが終わり、玉ねぎもたくさん植えています。子どもたちは、野菜の種や苗を植えて、収穫するという経験ができて、保育園生活を豊かにしています。

 

実は、ここ埼玉県では、県内で農業を始める人が増えているそうです。2021年度の県内新規就農者は330人もいます。10年前に比べると1.3倍と着実に増えています。農業で大きく収入を得ることを目的としているのではないようで、「稼ぐこと」とは別の「豊かさ」を求めているのです。

 

埼玉県は、一大消費地の首都圏という地の利があって、農業を始める好条件がそろっているので、就農相談も年間1000件を超えるそうです。

 

さいたま市桜区で約5000平方メートルの田畑を借りている27歳の男性は、昨年4月に独り立ちしました。埼玉大学を卒業したものの、「普通の就職活動」ではなく「人とのつながりを実感できる豊かな暮らしがしたい」と考えたそうです。卒業後は、小川町で有機栽培農家で1年間修業し、現在はカブやレタス、コメなどを育て、配達を含めて販売もほぼ一人で担うそうです。そこで知り合う人たちが手伝ってくれると言います。ただし、「年間250万円の所得が目標」というように、稼げる仕事ではありません。

 

農業は自然相手ですので、品質や収穫量は天候や病害虫の発生に左右されます。販路の確立も容易ではありません。営業センスが問われますね。赤字が続けば、継続困難です。

 

農林水産省は、2012年度から、新規就農者を対象に年間150万円の支援金を交付しています。目的は、既存農家の高齢化や担い手不足による農業人口の減少に歯止めをかけることです。市町村も独自の補助金を用意しているところも多く、さいたま市・上尾市・加須市などでは、機材導入費などで最大100万円を支給しています。

 

昨今、特にコロナになって、ますます働き方に対する価値観が変わってきています。「豊かな暮らし」を求めて、就農する人が増えていくのは、いいことだとは思いますが、もう少し稼ぐ金額が大きくならないと、現実的な豊かな暮らしにはなりません。

 

行政として、どんな取り組みがいいのか・・・もっと考えないといけませんね。