「ごみ屋敷」問題

私が以前勤務していた民間企業のOB会の会長は、現在神戸で「民生委員・児童委員」として、地域貢献を担っています。私の新入社員研修からずっとお世話になってきた大先輩です。この仕事は、無償で行われていて、かつては地元の名士と言われる人たちの「名誉職」的な位置づけでしたが、今は、なかなかやり手が少なくなってきていて、定年退職後のサラリーマンもたくさんいます。大先輩もその一人です。

 

仕事の一つに、一人暮らしのお年寄り民家のパトロールがあります。そこで、目にするのは、「ごみ屋敷」といわれる実態です。どうにもならない状況の時は、撤去作業などの手配などを行っているそうです。

 

最近、テレビのワイドショーや情報番組で取り上げられることが多い「ごみ屋敷」ですが、ごみ屋敷の住民の多くが一人暮らしの高齢者で、近所付き合いもなく、悪臭や害虫発生といった隣人トラブルを抱え、テレビカメラに暴言を吐いて、水をまくといったシーンが映されます。テレビのアングルは「とんでもない住民だ!」で、視聴率を取ろうとする魂胆が見え見えですね。しかし、このごみ屋敷問題は、どうして高齢者が家にごみをためてしまうのかを考えないといけません。

 

私の亡くなった両親は、実家であった埼玉県新座(にいざ)市に住んでいました。しかし、いつしか母は、料理を作ることが出来なくなり、近くの西友でお弁当を買って食べる習慣になっていきます。当然、ごみがたまります。ゴミ出しの曜日などもだんだんわからなくなってきたのです。認知症も少しずつ影響していました。私と妻は、定期的にごみ掃除に行っていたのですが、「このままではあかん!」と思い、今から15年ほど前に、私の家で同居生活が始まりました。

 

ごみ屋敷について、環境庁が発表した数字では、2018年以降の5年間に、ごみ屋敷が5224件も確認されたそうです。しかし、実際にはもっと多いと言われています。2000年代に入って、社会問題として扱われるようになり、26の自治体が罰則規定を設けているそうです。

 

しかし、高齢者の孤立という背景を考えると、「規制」「指導・勧告」を加速させることで問題解決にはつながらないことがわかってきました。

 

高齢化社会が加速する日本では、一人暮らしの高齢者の認知症が進行し、さらに身体能力も衰えてきた時に、周りから片付けやごみ出しの支援が得られなくなることで、ますます「ごみ屋敷」問題は深刻化します。

 

これを読んで、「私には関係ない」と思ったあなた。誰もがなる可能性があるのです。