失われていい命はない

命の尊さをテーマに絵本を手がけてきた、夢ら丘実果(むらおかみか)さんと吉沢誠さんの2人の絵本作家は、2007年から、全国各地の小中学校などを訪れ、自殺予防の出前授業を続けています。その授業回数は、510回を超えたそうです。継続は力なりに、頭が下がります。

 

授業では、二人で手掛けた絵本「カーくんと森のなかまたち」を朗読します。何の取りえもないと悩むホシガラスのカーくんが仲間の励ましを受け、木の実を運び、芽吹きを助けている自分の役割に気づいて元気を取り戻す物語だそうです。

 

「みんなも元気がなくなる時はありますか」と子どもたちに問いかけます。「周りと意見が合わなかった時」と発言する生徒がいたそうです。

 

自分は人と違うこと、人も自分と違うことを当たり前のように、受け入れられる学校や社会に、これからの日本を変えていかねばなりません。多数決で、賛否を決めるだけでなく、少数派意見でも、その内容を他の人に、自分の言葉で伝え、理解されれば、その意見が通ることを子どもたちにもたくさん経験してもらいたいですね。

 

2人の絵本作家は、過去に知人を自殺で亡くしています。仲間が、自ら命を絶ち、その寂しさや悩みに気づいてあげられなかった後悔の思いを抱えてきました。しかし、2人は、後悔するだけでなく、「自ら命を絶つ子がいなくなるまで活動を続ける」と行動に移し、今も継続しているのです。

 

子どもから寄せられた感想に「自殺してしまいたいと思ったことが何度もあるが、授業を受けて、命を無駄にしてはいけないと思った」(中学2年生)とつづられていたそうです。

 

私たち大人も、自分にできることを考えないといけませんね。