優しい「嘘」

俳優の竹野内豊さんが出演するCMで、「天井が高いっていいわね~」という妻のセリフに「そうだな~」と返し、「また嘘をついた」と心の声を伝えるシーンがあります。これは、家族の幸せを肯定する、優しい嘘ですね。

 

「16年間、私は夫との約束を破り続けている。いつの間にか、私たち夫婦の間に暗黙の約束ができていた。それはよくある言葉だけど、嘘はつかないというものだ。その約束を、私はずっと破り続けている。とはいえ、浮気をしているとか、夫に内緒で高級ブランドのバッグを買ったなどではない。ただ、嫌いなチョコレートを大好きだと言い続けているのだ」

 

これは、ある主婦のエッセーです。

 

彼女は、夫との初デートの時に、数えきれないくらいのたくさんの種類のチョコレートをプレゼントされたそうです。彼女は、チョコレートが嫌いなのに、夫は、同じ職場の人にリサーチして、チョコレートが好きという間違えた情報を手に入れたようです。チョコレートが好きだと思い込んでいるので、「どういうのが好きなのかわからなかったから」と言う夫の横顔が愛おしくなり、「ありがとう!チョコレート大好きだから嬉しい」という嘘をついてしまったそうです。

 

そして、カミングアウトできないまま、16年が過ぎたそうです。そして、今は、彼女か夫が亡くなる前までに、チョコレートを好きになるという挑戦に、切り替えたそうです。

 

「心の底から笑顔で、『今までチョコレートありがとう』と夫に感謝の気持ちをこめて伝えたいと思っている。もちろん、長年、嘘をついていた期間があることは内緒だ。終わりよければすべてよし!そんな将来を思いながら、今日も夫が買ってきたチョコレートを見つめている」

 

このように、エッセーを締めくくっています。これも、心があたたまる、優しい嘘ですね。優しい嘘の一つの定義は、「相手の気持ちを思いやるもの」かもしれませんね。そして、相手が嘘をついていることに気が付いても、知らないままで過ごすことも、また優しい嘘かもしれません。