一歩先を行く中学入試問題

今日はかなり強い雨が降りました。屋上は、湖のようになっています。そこで、とび箱やマットを出してきて、教室内で体操教室です。とび箱が盛り上がります。当然、年長と年少の比較や、個人の運動能力の差があります。全身筋肉でできているかのようなバネを持つ5歳男の子は、まるで体操選手のような高い跳躍を見せます。しかし、最初は飛べない園児も飛び方の基本を教えるだけで、格段に上手になります。こんなところからも、「基本が大切」というのが、よくわかりますね。

 

さて、今日は中学入試問題の話です。中学入試というと、膨大な知識を身につけて問題に対峙するというイメージが強いですが、それは、過去のことになりつつあるようです。過去問題集を出版する「声の教育者」の後藤さんは、「2015年あたりから記述が増えたり、設問数を減らして、考える時間を増やしたりするなど、思考力を問う問題が増加しました」と話します。

 

では、具体的にどんな問題が出されているか、興味がありますね。

 

慶應中学校の問題です。解答用紙には、キリンとパンダの絵があります。問題は、「キリンの模様・パンダの模様を描きなさい」です。普段よく目にしているようで意外と覚えていないものが問題になりました。「受験勉強ばかりでなく、いろいろなことに興味を持って観察して欲しいという学校からのメッセージが込められています」と後藤さんは言います。

 

2021年に、センター試験に代わって、大学入学共通テストが導入されました。問題文に会話が引用されて長文になり、グラフや表などの資料が付記され、読解力や思考力が重視されるようになりましたが、実は、中学入試は大学入試が変わる前から、難関中学を中心に読解力、思考力が試される問題が出題されているようです。

 

では、もう一問・・・開成中学校の国語の問題です。問題は、カニ弁当を売り切った営業社員と、売り残した営業社員について販売部長が社長に報告する場面の描写から始まります。「新宿支店の大西社員は、販売用に500個のカニ弁当を発注し、池袋支店の小池社員は450個のカニ弁当を発注しました。最終的には、新宿支店の大西社員は500個完売しますが、池袋支店の小池社員は、20個の売れ残りを発生させてしまいました。この問題には、午前9時の開店から午後19時の閉店までの売れ行き総数のグラフが示されています」

 

販売部長の報告を聞いた社長は、売り切った大西社員よりも売れ残した小池社員を評価しました。ここで問題です。「大西社員より小池社員の方を高く評価した社長の考えはどのように考えられるでしょうか。『たしかに』『しかし』『一方』『したがって』の4つの言葉を使って説明しなさい」

 

どうですか・・・中学入試の問題ですよ。大人でも、難しい問題です。ポイントは、販売総数のグラフを見ると、大西販売員は、閉店前の18時にすでに500個完売させていたのです。

 

このヒントで、ピンときましたね。大人の私の答えは、「大西販売員は、たしかに500個完売させました。しかし、小池社員は430個しか販売できなかったことになります。一方、グラフを見ると大西販売員は、18時には完売してしまったので、閉店前の1時間に商品があれば、さらに売上が取れたことになります。したがって、大西販売員は、発注見込みが甘く、販売チャンスロスを発生させてしまったのです。最後まで、完売を目指して頑張った小池販売員の方が、評価が高いと言えます」

 

こんな答えを中学受験をする小学校6年生が答えるなんて、私の想像の範疇を超えています。しかし、このような問題を解くには、知識の詰め込みだけではできないことだけは、間違いないです。これからの若者には、「考える力」がますます問われるということです。私たち大人も、子どもに考えさせるアプローチが大切ですね。